(9/25の記事から先に読んでください)

Cold Beer & Crazy Beat!~ FLYING WALRUS AKIHIのBlog-jb2


 ”Moby Dick“の譜面も単純だった。スネア、タムとキックが交互に16分音符をふたつずつ(文章で書くと解りにくいなあ. . .)並んでいるだけだ。
 レッド・ツェッペリンのアルバムは、ドラムには拍子抜けしたが、(いや、期待がムチャクチャデカかっただけで、凄いドラムなんですよ)バンドとしては最高なので、もっと掘り下げて聞くことにした。

 レッド・ツェッペリンのディスコグラフィの一般的な解説で言うと、1stで衝撃的なデヴューをし、2ndでバンドの地位はおろかハードロックバンドのひな型を作り上げ、3rdでフォーク/トラディショナルに寄り道したと思わせてその広がった幅を4thで見事に結実させた、ということになっている。彼らの2ndはどんなに凄いハードロックアルバムなのか。

 で、件の”Moby Dick”は2ndの”ll”に収録されている。で、聞いてみた。

 ”Whole Lotta Love”でブっとんで. . .このへんは曲名だけ先に頭に入っているので、皆「これがあの. . .」という感じである。だが、”Thank You”の叙情性や”Living Loving Maid”のコミカルさなど、王道のハードロックアルバムというよりは、その幅の広さに、逆にとらえどころのない印象もあった。(しかし単純と言うか何と言うか。同時期に聞いたディープ・パープルの”Live In Japan”なんかは、音は古くても、これぞハードロック!って感じに聴こえたものです)

 で、”Moby Dick”。重厚なブル-ズ進行のリフ。間に挟み込まれるギターフレーズ。それが終わると. . .なんとこの曲はドラムソロだった!!
 しかもいきなりコンガのような音がするし、なんだこりゃ?(ボンゾはソロになると手のひらでドラムを叩いたりするんですよ)
 しかし、単独で聞くとその音の恐ろしいこと。ヘッドホンで爆音で聞くと、まさにタイコを鳴らしきってる感じがする。爆風スランプのファンキー末吉氏が言っていた。「ドラムの音は、デカイ音がいちばんいい音である。いい音で演奏するためには、まずデカイ音を出す練習をするべし」聞いている場所が彼のドラムのそばでなくても、充分デカイ音と認識できる音である。更に、多分録音時に若干レベルオーバーになってしまっていて、全体に歪んでいる。その事実が恐ろしさを倍増するのだ。

 曲(ソロ)の後半に、本に載っていた譜例のフレーズが登場。しかし、聴き手はもうフレーズなんか気にしちゃいない。ただ、圧倒されるのみである。

 ”Moby Dick”とは、メルヴィルの小説「白鯨」に登場する巨大なクジラのことだ。よくもまあこんなタイトルをつけたものだ。ボンゾの体躯とドラムスタイルを見事に言い表したタイトルと言うべきだろう。

 同じドラムソロをフィーチャーした曲でも、ディープ・パープルの”FireBall”に収録された、イアン・ペイスのドラムソロ曲”The Mule”のタイトルの意味は「らば」だ。この差は何だ?

 しかし、この曲を聞いた時点では、まだこの男がライヴになるとソロを10分以上も繰り広げるとは思っていない。ツェッペリンのライヴを記録した映画「永遠の詩」を見て、いろいろな意味で打ちのめされるのは、さらに数年先なのだ。