音楽で言う、「セッション」とは、複数のミュージシャンが一緒に演奏することを
指す。

リハーサルやライブと違って、その場で偶発的に生まれる演奏は非常に

スリリングで面白い。

既存の曲が思わぬ方向に変化したり、まったく新しい楽曲が生まれる瞬間に

立ち合うこともある。

演奏者自身が引いたこともないフレーズが飛び出す場合もある。

何が起こるか予測できない部分、そこがセッションの大きな魅力である。

 

セッションというと、もともと音楽的に即興が重要な部分を占める

ジャズというジャンルが思い浮かぶ。もちろんジャズのセッションも多いが、

今やアマチュアミュージシャンが参加できるセッションを開催するライブハウス

やライブバーが増えて、肩肘張らず気楽に参加できるポピュラーミュージックの

セッションも多くなった。

セッションホストにはプロの有名なミュージシャンが参加している場合もあり、

ある種「大人の遊び場」としての地位を確立した感がある。

子育てが一段落した、腕に覚えのあるアマチュアミュージシャンたちが、

初めて顔を合わせる人たちと、毎晩のようにどこかで音を出している。

 

 

さて、アマチュアミュージシャンが参加できるセッションには、おおまかに

以下のような種類に分けられると思う。

 

1. 演奏する曲をあらかじめ決めておき、各パート参加者を募る。開催日は、

課題曲を順番に演奏してゆく。ビートルズや松任谷由実、ハードロック全般や

昭和歌謡など

テーマが決められており、(まれに「なんでも」というセッションもあるが. . )

参加者が事前にしっかり練習することによって、その場で初めて顔を合わせる

演者との演奏でも、演奏の完成度は比較的高い。

 

ボーカル、ギター、キーボード、ベース、ドラムの主要パートはセッションホスト

がおり、集まらなかったパートなどはホストメンバーが補充する。

 

 

2.「ブルーズ」や「ファンク」、「ソウル/R&B」など、大きなテーマは

決まっているが、演奏する曲はその場で決め、演奏できるメンバーを募り、

演奏が成立する状態になったところで演奏する。

曲の構成、どの段階でどのパートがソロを取るか(言うまでもないが、ソロパートは

楽器演奏者の腕の見せ所、「すげー」と言ってもらえる場なのである)などを

演奏前に(演奏中にも)打ち合わせし、違いにアイコンタクトを取りながら

曲を進行させる。

 

ホストは、セッションで演奏されることの多い定番曲の簡単な構成譜を

用意しておく場合が多い。

演奏者も、演奏したい曲の譜面、歌詞などを持参し、演奏時に共演者に配る。

または、口頭で説明をする。

演奏者がどれだけ演奏曲を理解しているか、また知らなくても適応能力が

あるかないかで当然演奏のレベルは変わってくる。

 

 

 

3. 演奏する曲はその場で決めるが、既存の曲だけでなく、「シャッフルのリズム、

KeyはDでブルーズの12小節進行」とか、「♩=90くらいの16ビート、

Eのワンコードで」など、簡単な枠組みのみを決めて自由に演奏をする。

 

大袈裟に言うと、作曲をしながら演奏するわけで、セッションの中ではかなり

クリエイティブな部類に入るが、一つのコードや循環コードを基本にして

演奏されることが多く、ヘタをするとまとまりのない演奏がだらだらと

続くことにもなる。

 

言うまでもなく、1→3の順で偶発性は高くなる。

 

 

さて、ここまでが前置きである。

 

私がセッションホストバンドのピアニストとして参加している、

「Mick Jagarico & Joe Kids Presents新宿御苑ストーンズセッション」は、

"1"と"2"の中間くらいに分類されると思う。

 

・テーマ:ローリングストーンズの楽曲またはストーンズがカバーしたブルーズや

R&Bの曲、メンバーのソロ楽曲など

・セッションホストは、ボーカリスト、ギタリスト2名、ベーシスト、ドラマー、

ピアニストの6人である。

・ホストはストーンズのメジャーな曲の演奏には対応するが、マイナーな曲、

マニアックな曲は事前にリクエストをお願いしている。

・ギター、ベースは持参してください。

 

セッション当日の流れをおおまかに説明すると

 入場し入り口でチャージを支払う(演奏に参加するか否かで金額が違います)

プレーヤーは受付のノートに名前と演奏するパートを記入する。

(ドリンクもオーダーしましょう)

 

19:00スタート、まずホストバンドが1曲演奏する。

その後、ノートのリストのトップに書かれたプレーヤーから順に、演奏したい曲を

2曲ないし1曲(参加人数、演奏時間によって違う)を ホストバンドと共に演奏する。

演奏する曲は、呼び出されたプレーヤーが決めるが、演奏できる曲であれば、

まだ順番の来ていないプレーヤーでも演奏に参加できる。

その場合は、ホストメンバーと交代する。

 

順次、ノートのリストの順番で、休憩を挟んで終了時間になるまで演奏する。

 

一番多いプレーヤーはやはりギタリストで、次がヴォーカル(?)、ドラマー、

鍵盤とベースの順だろうか。

いろいろなタイプのプレーヤーがやってくるが、ここでひとつ参加者にお願いしたい。

 

 

曲のリクエストの際、どのバージョンで、ギタリストは誰役で演奏したいかを

教えてもらえるとホストは助かります。

 

 

ローリングストーンズのように、結成60年をゆうに越して今尚活動を続けている

バンドのレパートリーは、長い年月の間に次々と違う解釈が生まれてゆく。

メンバーチェンジもある。リクエストの際は、たとえば

「"Street Fighting Man"を"Get Ya-Ya-Yas Out"のバージョン

で演りましょう。ミック・テイラー役をやりたいです」のように伝えてもらえると、

非常に嬉しい。一応、ギタリストにはホストリーダーのJoe Kidsが都度確認します。

 

しかし

ローリングストーンズのナンバーは一筋縄ではいかない。同じツアーの中で

演奏されている楽曲でも構成が変わるナンバーがある。

間奏のリフは何回繰り返すのか。歌はどこから入るのか、2番に行く前の

ブレイクは1小節なのか、2小節なのか

などなどなど。

リクエストで指定がない限り、基本はレコーディングバージョンでの

演奏になるが、その場の感覚のぶれや記憶違いなどで、曲がとんでもない

方向に行ってしまう場合が多々ある。

 

そうなることを防ぐ手段の一つとして、一緒に演奏しているメンバーと

アイコンタクトを取ることがある。このまま引っ張るのか、

次にセクションに行くのか。

 

これは、ストーンズに限らず、セッションにおいては非常に重要なことである。

演奏しながらのコミュニケーションが取れているかいないか、それ以前に、

他のパートの音がちゃんと聞こえているかは非常に重要だ。

合図を出すのも有効だが、出すタイミングが遅すぎたりするとついていけない

メンバーがいたり、タイミングが早すぎたりすると、先走って次のセクションに

進んでしまう、などといったことが起こる。

 

合図やアイコンタクトなどは、ある程度セッションに慣れたひとでないと

難しいと思うので、まずはリクエストした曲とバージョンの構成を、

自身がしっかりと把握しておくことが大事だ。

 

セッションなのにそこまで必要??ホストがなんとかしろよ!

はい。なんとかします。

 

また、次々に合図を出して、指揮者のようにバンドを操ろうとするプレイヤーもいる。

これはこれで良い場合もあるのだが、「次はお前ソロ!」「次はお前!」みたいに

仕切りすぎると、他のプレイヤーから反感を買う場合もある。

 

ギターボーカルが1番を歌い終わってそのままギターソロを弾くとする。

16小節弾いたところでもう一人のギタリストにソロを振る。ここまでは良い。

だがもう一人のギタリストが8小節しか弾いていないのに次を歌い出してしまうと、

イラっとくるでしょ。

 

まあ、こういう「困ったちゃん」はそんなに多いわけではなく、良かれと

思ってやっている場合も多い。困ったちゃんといえば、ストーンズの

セッションではないが、自分でリクエストした曲が全く弾けない、

というギタリストもいたなあ。。

 

 

セッションに限ったことではないが、ライブハウスのステージに立って、

ハウスの機材を使用するからには基本的な使い方を知ったうえで使いたい。

真空管アンプのスタンバイスイッチの使い方、シールドケーブルはなるべく踏まない、

マイクをモニターに近づけない、ベーシストはD/Iからケーブルを抜く時の注意など。

 

細かいことになるが、ドラマーは、バラードなどで自分の演奏が休みのときは、

スナッピーをOFFにしておきたい。

 

 

. . .なんか、説教臭くなってしまった。

しかし、遊びにはルールが必要だし、ルールを守って遊ぶことで、

楽しさは広がってゆくのである。

 

御苑ストーンズセッションは、ホストバンドの演奏レベル、対応力の高さでは

他と群を抜いていると思うし、プレーヤーは心から楽しんでもらえるはず!

(あ、まだ"She's A Rainbow"のピアノ弾けない。。)

 

演奏した皆が楽しめるセッションにします!